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March 27, 2006

オペラ「後宮からの逃走」

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最初の感想は、一言「ブッシュに見せたい!」
週末に久しぶりにオペラを2本ほど自宅鑑賞しました。1つはケルビーニ作の「メデーア」で、ギリシャ悲劇がベース。もう1つはモーツァルトの「後宮からの逃走」です。今日はモーツァルトの方をご紹介しますね。私が観たのはこちらです。

モーツァルト作品、まだ全部は観ていなくて「偽の女庭師」「フィガロの結婚」「魔笛」「ドン・ジョヴァンニ」「バスティアンとバスティエンヌ」をこれまでに観ました。
今回初めての「後宮からの逃走」。後宮はいわゆる「ハーレム」です。アラビアン・ナイトによって西欧の人々が想像力と妄想たくましく働かせたらしいハーレム。タイトルから受ける印象なのか、今まであまり興味がなくて観ていませんでした。そう言えば仙台出身のソプラノ歌手・菅英三子さんは、この作品でプラハの歌劇場でヨーロッパデビューされたんでしたっけ。

たまたまメイキングとも言える「Behind the Stage モーツァルトinターキー」という番組を観て、大まかなオペラのストーリーが分かり(イスタンブールの王宮で録画されていました)、半年も前に録画していた映像をようやく観たのです。
想いのほかよかった・・そしてラストは、某アメリカのブッシュ大統領に見せたいほど素晴しかった!

ヨーロッパとイスラム圏の争いや戦いは、「十字軍遠征」をあげるまでもなく長く根強いものがあります。未だに私たちも、キリスト教=(結婚式でキリスト教が流行るように)かっこいい、イスラム教=よく分からない=怖いといったような短絡的な図式を描きがちです。キリスト教徒の責任も大きいですよね。自戒を込めつつ・・。

ストーリーは、あるスペインの貴族が恋人をトルコのハーレムにさらわれてしまいます。彼女を助けるべくトルコに向かうのですが・・。
何故『ブッシュに見せたい!』と思ったかというと、太守があまりにもかっこよかったからなのです。モーツァルトの時代、トルコ文化が流行った時期がありました。例えばモーツァルト自身も「トルコ行進曲」などを作っていますよね。ウィーンが一時トルコに制圧され、圧倒的なトルコの文化や芸術にヨーロッパの人々は触れました。

恋人を助けに来たスペインの貴族は、実はトルコの太守の宿敵の息子だったのです! それを知って太守は怒りに燃えます。しかし・・。
ラストの台詞が大変感動的です。

不正をするのがお前の家系の特徴だ。
私はお前の父親を憎む。だからこそ同じ真似はすまい。
大いなる喜びなのだ。
不正を悪行で報復するより、善行で報いる方が!
少なくともお前は父親よりも人間的になろう

復讐ほどひどいことはない
それに対して人間的で善良で
私欲を抑えて許すことは
ただ偉大な心のみが できること!

ブッシュさん、この台詞を聞きなさい!
報復の連鎖は悲劇のみを生み出し、生命は決して生み出さないよ・・。
「恩を仇で返す」のではなく、言うなれば「仇を恩で返した」のです。それをヨーロッパ人ではなくてトルコ人に言わせたことに、どこかモーツァルトらしさを感じます。
彼は宮廷や貴族と言ったこれまでの封建社会に辟易としていた。パトロンがつかないで自活する道を選択し、それ故に若くして命を落としてしまったのですが、非常に進歩的で自由人だったのでしょう。まだ時代が彼には追いつかなかった・・。

メロディも大変美しく、モーツァルトが結婚するための収入を得るために書いた作品だとも言われ、主人公も自分の妻と同じコンスタンツェで恐らく彼が人生でもっとも幸せな恋愛をしていた頃なのでしょう。その若さと喜びがあちこちにはち切れんばかりです。
ミュージカル映画「オペラ座の怪人」日本公開時、作曲者A・ロイドウェバーの紹介は『現代のモーツァルト』でした。この作品を観ていたら、にわかにその台詞がよみがえりました。確かにそうだ! 一度耳についたら頭から離れないメロディラインは、両者に共通しています。

彼の作品は天上の音楽のように美しく、時に美しすぎてこれまで取り立てて私の興味をそそるものではありませんでした。でもモーツァルトの素晴らしさがもっともよく表現されているのは、もしかしたらオペラかもしれません。そこには俗っぽさや人間っぽさがあふれんばかりに躍動している。彼がどんなに民衆を愛し、民衆のための音楽を書きたかったのかが今なお生き生きと伝わってくるようです☆

オペラって、最初はちょっと敷居が高く感じられるかもしれませんが、要するにワイドショーだと思うとよいかも!
サン・サーンスの「ヘンリー8世」などは、まさに彼の離婚問題がそのまま作品化されています。この理由も面白いですよ。フランスでは当時オペラを作品化するにあたり、どうしても身近な人物のゴシップは発禁にならざるを得なかったようですが(そりゃそうだ・・)、英国なら宗派が違う(カトリックではなくて、プロテスタント)ので比較的好き勝手に描いてもヴァチカンからもノープロブレムだったそうな。r(^_^;) とっても人間くさい話題ですよね~。

演奏はエヴァ・メイもパトリシア・チョーフィももちろん文句なしに素晴しかったけれど、ぴかいちはオスミン役のクルト・リドゥルです。圧倒的な低音とコミカルな演技に惚れました・・♪ あのコミカルさで、実はワーグナー歌いというのも驚き。レパートリーがかなり広いのですね。

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